雇用社会の破壊に繋がる~ライドシェア問題を考える市民会議in大阪~

 ライドシェアを含めたシェアリングエコノミーが雇用と安全を破壊しかねないという問題を正しくとらえ得る世論形成に向け、情報を発信していくことを目的に8月5日に発足した「交通の安全と労働を考える市民会議」(ライドシェア問題を考える市民会議)が公開シンポジウムを大阪で開きました。

 冒頭、大阪労働弁護団の代表幹事でもある中島光孝弁護士があいさつに立ち、「交通の安全と労働を考える市民会議を大阪で開いた理由について述べたい。ライドシェア、いや正確にはシェアを行っている訳ではないので、米国では『ライドブッキング』と呼ばれているが、このサービスは運転者と利用者が直接運送契約を結び、ライドブッキングを行う事業者は単に仲介をするだけである。タクシーに関しては労働法や事業法が適用され、事業者が運転者や車両を管理しなくてはいけない。これは労働者・利用者保護、輸送の安全を担保する上で必要なことである。このことがライドブッキングでは適用されないことが大きな問題だ。一部の報道では、ライドブッキングはスマートフォンで車を呼ぶことができ、さらにタクシーより安かったなど好意的な意見が紹介されている。しかし、その実態は既に海外で大きな問題や訴訟が発生している。現在、政府では規制改革推進会議でライドシェアも議論の候補に挙がっていると言っている。市民会議の中で利用者・事業者・運転者など様々な立場で、問題点を議論しており、今回大阪の地で開催した。是非、ライドブッキングについて大いに意見を出していただきたい」と述べました。

 次いで、労連の政策顧問でもある戸崎肇教授から、「タクシー交通の実情とライドシェア」をテーマに講演を受け、「ライドシェアは、これまでと異なり業界の外から、タクシーのあり方を根本的に揺るがす問題が起こされている。交通空白地の解消や福祉輸送の観点から、地方で社会実験が始まっているが、これはライドシェアを導入するための結論ありきの実験である。もちろん、ライドシェアの目的は大都市圏であり、大都市に広がれば市場の原理で儲からない地方は結局撤退していくだろう。マスコミもライドシェアを深く理解しない中で賛成の立場で報道しており、食の安全とは異なり、交通の安全に関しては思考停止になっているのではないか。タクシーをはじめとする公共交通は、長い期間を掛けて安全輸送や深夜・早朝の輸送の使命を果たしてきたが、ライドシェアではドライバーの都合の良い、儲かる時間帯しか走らなくなる。それで社会的使命を達成できるのか。一方で、ライドシェアでサービスを提供するドライバーは雇用でないため、社会保障を受けることができず、収入も安定しない中で生活していけるのか。実際に海外では労働者制について訴訟も起こされている。利用者においても海外では暴行事件も起きている。しかし、ライドシェアは現状の政府の会議やマスコミ報道から考えると導入を止めることは難しいと言わざるを得ない。この半年が勝負であり、市民会議だけではなく、一般の方々にも議論を広げ、きちんと問題点を声を出していかなくてはならない」と訴えました。

 続いて、独立行政法人労働政策研究・研修機構の山崎憲主任調査員の講演では「シェアリングエコノミーと壊れる雇用社会」をテーマに、雇用社会がどのように変わっていくのか触れ、「雇用社会はきちんと子どもを育てられるような給料をもらえ、きちんと働ける環境を会社が実現する社会と考えている。シェアリングエコノミーはそういった社会を壊していくことに繋がっていくのに、なかなか日本では伝わっていない。米国を中心に欧州、アジアでもシェアリングエコノミー絡みの悪いニュースが後を絶たない。雇われずに働くという人が米国と欧州で1億5千万、どの国でも3割くらいを占めており、まだまだ伸びると言われている」とシェアリングエコノミーのような請負で働く人が増える可能性があることを示唆し、「シェアリングエコノミーは低賃金で働いている業界ほど入りやすい傾向がある。米国ではタクシーだけでなく、在宅介護などが伸びている。例えば、ウーバー社のサービスでは、ドライバーは業務請負になり、下請の立場になる。当然、社会保障や雇用保険などが適用されず、労働基準法の適用もなく、車両整備や燃油代も自己負担となる。ウーバー社のライバルは、タクシー会社であり、運賃もタクシー代よりも低い運賃を要求するので、ドライバーは収入は低くなる。このような中で社会保障も受けられる、労働環境も劣悪な中で生活が成り立つのか。一方で、これまで雇用社会が保障していきた生活できる給料、地域経済を支えてきた個人消費、社会保障制度などが破壊されることにも繋がる。日本の社会全体に非常に危険なことが迫っていると言える。米国では既にこのことに気付いており、様々なチャレンジをしている。例えば、ウーバー社のような元請企業にきちんと雇用者責任を課し、公正な競争環境を整備したり、ドライバーに団結権を与えたり、請負者に対する新しい社会保障の検討を始めたりしている」とシェアリングエコノミーが日本の雇用社会を破壊しかねないと警鐘を鳴らすとともに、「では、これを阻止するために、どのように社会運動を進めていけばよいか。一つは戦略シートを活用すること紹介したい。やみくもに行動するのではなく、『自分の組織のリソース(人材・予算)』『連携できる組織および敵対者』『双方の意思決定権者は誰なのか』『意思決定権者に効果的な戦術』など現状を分析し、効果がある所に効果的な行動を行っていくことが重要である」と今後の市民会議を含めた、各組織の運動について戦略を持って進めていくことが重要だと説明しました。

 利用者の立場として関西生活者連合会から、「ライドシェア問題について初めて聞いた。保育業界や地域貢献の場でシェアリングエコノミーについての問題を聞くことも多くなってきた。本日聞いた内容をしっかり消費者に伝えていく」と述べ、参加者から多くの質問・意見が出され、回答を行い終了しました。

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