ライドシェア問題を考える市民会議がシンポジウムを開催

200人を超える関係者が出席

 8月5日に発足した「交通の安全と労働を考える市民会議」(ライドシェア問題を考える市民会議)が主催となり、9月29日に東京都の「衆議院第二議員会館」で「ライドシェア問題を考える公開シンポジウム」が開きました。

 シンポジウムには弁護士や大学教授等の有識者、国会議員、労働組合、タクシーの運転者や利用者の代表を含めて約200人を超える方々が参加しました。

ライドシェアは海外での問題点の検証が必要

 冒頭、市民会議の代表世話人の一人である宮里邦雄弁護士があいさつに立ち

「立ち見が出るほどの方々に参加いただいたことに感謝したい。

 政府は規制緩和により企業は新たなビジネスチャンスを生み、雇用を拡大し、利用者は多様なサービスの恩恵を受けることが出来ると言っているが、労働市場に目を向けると労働法制の規制緩和によって、非正規雇用の拡大により雇用が劣化し、労働者の商品化が急速に進んでいる。ライドシェアの解禁はわれわれに何をもたらすのか。シェアという言葉はプラスのイメージを抱きがちだが、果たしてライドシェアはプラスに繋がるのか。海外で急速に広まっているが多くの問題が発生し、訴訟も起こされている。果たして利用者の安全は確保できるのか。また、事故が起きた場合に責任はどうなるのか。タクシードライバーへの影響はどうなるのか等、多くの問題点を抱えている。

 成長戦略の名の下に問題点が十分に検証されないまま導入されようとしていることに強い危機感を感じる。私たちは海外の実態や問題点を多角的に調査・検証し、利用者と働く人の共通の利益を追及するという視点で市民会議で検討していく」と述べました。

 次いで、シンポジウムに駆けつけた多くの国会議員から、ライドシェア問題について意見をいただきました。

 交通運輸政策研究会(労連議員懇談会)の会長でもある髙木義明衆議院議員は、「ライドシェアが国民に与える影響はどうなのか。とりわけ日夜働くドライバーの皆さんがどうなっていくのかをしっかり頭に置きながら、国会で議論していく」と訴えました。

ライドシェアの働かせ方は、日本の労働関係を大きく揺るがせる

 続いて、「タクシー交通の実情からライドシェア問題を考える」をテーマに、市民会議の代表世話人の一人で交通労連の政策顧問でもある戸崎教授が講演を行い、

「シンポジウムの目的はライドシェア問題について考えることであり、反対をすることが目的ではない。新しいシステムが生まれることは否定はできないが、問題点を十分に検証してから導入することが大切だ。利用者やメディアは十分な検証を行わない中で、ライドシェアについて漠然とした好意的なイメージを持っているが、海外では多くの問題や訴訟が行われており、きちんと問題点を検証して、導入について議論していかなくてはいけない。シェアリングエコノミーは新しい考え方ではなく、資産を共有するなど、これまでも様々なシェアが行われているが、人や労働のシェアについて、まして交通に関しては安全性を担保し、安定的に供給しなくてはいけないなど、他のシェアとは異なる視点で議論しなくてはいけない。

 交通を考える上で、一番大事なのは乗客の安全性が担保されるかである。タクシーと異なり、ライドシェアではドライバーは雇用されておらず、健康状態や車両整備の状況などを個人に委ねている。そのような環境で果たして安全性の担保が出来るのか。現在のタクシー事業においても、規制緩和以降に多くの事業者が新規参入し、監査などのチェックが追いついていないのが実情である中で、ライドシェアの全てのドライバーのチェックなどは到底不可能である。

 また、ドライバーは本業ではないため、安定供給など保証できない。それで地域の公共交通を守っていけるのか」とライドシェアの持つ問題点について述べた後、「ほとんどの地域では、交通が重視されておらず、交通政策会議すら設置されていないのが実態である。しかし、災害が発生した時に一番活躍するのが交通である。われわれは社会的に交通の重要性を示し、地域社会を守る観点から交通を考えなくてはいけない。こういったシンポジウムを地方でも開き、地方自治体等が真剣に交通を考えていく環境を作っていかなくてはならない」と訴えました。

 引き続き、アジア太平洋資料センターの内田聖子事務局長から「進むサービス貿易・オンデマンドエコノミーとしてのライドシェア問題」をテーマに、ライドシェアを含めたITビジネスについて、「このビジネスはアメリカではシェアではなく、オンデマンドエコノミーと呼ばれており、人を雇って事業を行うのではなく、可能ならばロボットや機械で代替するという発想を持っている」と業界全体がどのような方向や発想を持っているのかについて説明を受けた後、日本弁護士連合会元副会長の新里弁護士が過度な規制緩和、ドライバーの雇用問題、利用者の安全について問題提起が行いました。

 また、日本労働弁護団の棗一郎弁護士からは「ウーバー社のようなライドシェアの働かせ方は、本当は労働関係のある雇用なのに業務請負や委託を偽装し、自分達は仲介ビジネスと言って、安全責任を逃れようとしている。このビジネスが全面的に日本に入ってくれば、日本の雇用社会に大きな悪影響を及ぼす。ここで食い止めなくてはいけない」と強く訴えました。

お客様の安全を脅かすライドシェアは許さない

 続いて、交運労協およびITF(国際運輸労連)からもライドシェア問題について意見があった後、ドライバーを代表して八王子のタクシー会社に勤務する女性ドライバーから、

「私は22歳からタクシードライバーで働いており、タクシーはお客様の満足感などを直接感じることが出来る非常にやりがいのある職業だ。また、女性にとっても安全で楽しい職場であり、一部のテレビ番組の内容と異なる。

 ライドシェア問題についても一部の表面上のメリットのみ報道され、危険性や問題点があまり報道されていないと感じる。私たちはプロドライバーとして自覚を持ち、安全に快適に目的地までお客様をお運びするため努力を行っている。私たちはお客様の安全を揺るがすようなライドシェアは絶対に許してはいけない」と述べました。

 最後に、前職で飛行機の客室乗務員をしていた女性から、

「私は職業上、タクシーを早朝や深夜の通勤に利用していた。海外では女性が一人でタクシーに乗ることは身の危険を感じるが、日本のタクシーは安全性はもちろん料金についても信頼して利用することが出来た。これからも女性が一人で安心して乗れるタクシーを守っていただきたい」と利用者の意見を述べ、市民会議は盛会裏に終了しました。

 なお、市民会議は今後も東京だけでなく、地方でもシンポジウムを開催していく予定です。

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