価格交渉の機運逃さず、適正な価格転嫁を


 エネルギー価格や原材料費、労務費などが上昇する中、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を作るため、政府は毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」に設定しています。

 

 この「月間」おいて、価格交渉・価格転嫁を促進するため、広報や講習会、業界団体を通じた価格転嫁の要請等を実施、各「月間」終了後には、多数の中小企業に対して、主な取引先との価格交渉・価格転嫁の状況についてのフォローアップ調査を実施し、価格転嫁率や業界ごとの結果、順位付け等の結果をとりまとめるとともに、状況の芳しくない親事業者に対しては下請中小企業振興法に基づき、大臣名での指導・助言を実施されています。

 

 2024年3月の状況は、「価格交渉が⾏われた」割合が前回調査(2023年9月)より増加(58.5%→59.4%)し、特に「発注企業から交渉の申し⼊れがあり、価格交渉が⾏われた」割合が増加(14.3%→18.4%)しています。

 一方、「価格交渉を希望したが、交渉が⾏われなかった」割合も依然として約10.3%あり、二極化が進行しています。

 

 価格転嫁の状況をコスト要素別でみると、エネルギーコスト40.4%労務費40.0%で、前回調査より上昇しましたが、原材料費の47.4%よりは低い水準にとどまっています。

 

 また、受注側企業から見て、発注側企業に対して価格転嫁して貰えたかについて、価格転嫁に相対的に応じて貰えている業種は、製薬(コスト増に対する転嫁率60.0%)、化学(58.6%)、卸売(55.9%)、相対的に応じて貰えていない業種は、飲食サービス(同前回33.5%→同今回25.9%)、トラック運送(24.8%→32.2%)、廃棄物処理(29.0%→32.8%)となっています。

 

 価格交渉は行われたが、全く転嫁できなかった企業の割合をみると、トラック運送が19.7%と公表された27業種で最も高くなっていますが、前回(28.9%)より9.2ポイント改善しており、価格交渉の機運を逃さず取り組む必要性を示す結果となっています。

 

 なお、今回調査では、2023年11⽉に「労務費の指針」が策定・公表されたことを踏まえ、「労務費について、価格交渉できたか」についても初めて調査され、価格交渉が⾏われた企業(59.5%)のうち、68.9%において、労務費についても価格交渉が行われた一方、「⾃助努⼒で解決すべきとして、交渉⾃体を拒否された」「労務費上昇分について要求されるエビデンスを⽰す事が出来ず、諦めざるを得なかった」「労務費が上昇しているのは御社だけではありませんと⾔われ、交渉に応じてもらえなかった」など、8.8%の企業が、「労務費が上昇し、価格交渉を必要と考えたが出来なかった」と回答するなど、引き続き「労務費の指針」の周知・徹底が必要と指摘されています。


 

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